このたび、さいたま市議会では初めての海外視察として、アメリカ合衆国行政視察・姉妹都市訪問を行い、参加議員は、中村圭介、生方博志、畠山晃司郎、関根信明、そして私、中山欽哉の5名の視察団でありました。
私たち視察・訪問団一行は、去る10月10日から8日間にわたり、アメリカ合衆国ペンシルベニア州ビッツバーグ市、バージニア州リッチモンド市を視察・訪問いたしまして、10月17日に全員無事に帰国いたしました。
このたびの視察の主な目的は、ピッツバーグ市、リッチモンド市の先進行政事例視察ならびに両市姉妹都市訪問による、市政の発展、そしてさいたま市との国際交流事業の推進に寄与することであります。
それぞれの視察・訪問先では快く対応していただき、関係者各位から親切丁寧な説明を受け、活発な調査活動、意見交換、現地調査、交流事業を行うなど、相川市長を初めとする市民訪問団とともに、大変密度の濃い、充実した貴重な体験をさせていただきましたことを、深く感謝申し上げます。
初めに、姉妹都市交流事業について、ピッツバーグ市では、ピッツバーグ・さいたま姉妹都市交流委員会主催による、歓迎レセプション。トム・マーフィ市長表敬訪問。ピッツバーグ市主催によるウェルカム・ディナー。さいたま市訪問団主催による文化交流事業。ピッツバーグ芸術協会主催によるポットラック・パーティー。さいたま市主催による答礼レセプション。
リッチモンド市では、リッチモンド市長および本会議開催中の市議会への表敬訪問。リッチモンド市主催による歓迎レセプション。リッチモンド・さいたま姉妹都市交流委員会キャサリーン・ネクソン委員長宅にて、さよならパーティーなど、連日におよぶ交流事業に参加いたしまして、いずれも両市長、姉妹都市交流委員会委員長を初めとする関係各位の心温まる歓待を受け感激しました。
旧市の姉妹都市交流を、合併後のさいたま市も引き続き実施することは、大変意義あることと改めて実感してまいりました。
次に、ピッツバーグ市、リッチモンド市の先進事例視察による調査・研究について、10月11日、最初にピッツバーグ大学医学部マクガワン研究所を視察いたしました。
広報担当準学長のジョージ・フェクター氏ほか人工臓器の権威者であるブラック・ハトラー氏などから説明を受けました。
ブッシュ大統領が2年ほど前にピッツバーグ市を訪れた時、かつての「鉄鋼・煙のまち」から「知識のまち」にすっかり変貌したと絶賛したとのことでありますが、この「知識」とは、医療分野のことと理解しているとの話があり、全米257ヵ所ある医療機関で臓器移植の実施数は一番多い病院であるが、それでも患者は肺で1年、心臓で半年以上待たなければ移植を受けられない状況であり、また地下鉄サリン事件も大きな契機となり、心臓・肺の人工臓器の研究開発に取組んだとの事であります。
行政、大学、企業が協働し研究開発にあたっており、研究の経緯と進行状況、運営の状況など詳細な説明を受けた後、施設を視察し、産・学そして行政との連携の重要性を学びました。
次に、ピッツバーグ・リージョナル・アライアンスにて国際ビジネス開発担当上級副社長のロジャー・クランビル氏よりピッツバーグ市の経済の概要説明を受け、まちの変貌についてなどの意見交換を行いました。
次に、市役所を訪れ、「ピッツバーグ市の危機管理について」「交通システムについて」「市街地再開発について」市の担当職員より説明を受けました。
危機管理については、昨年9月11日の同時多発テロ事件以来、市にチームを結成し、報道機関を通じての市民への連絡方法、企業に自動的に対処方法を通知できる方法を検討中とのことであります。
交通システムについては、LRT(ライト・レール・トランジット)、バス、インクライン(ケーブルカー)の公共交通機関の運営状況などについて説明があり、市街地再開発については、かつての「煙のまち」から世界で最も目を見張る都市景観の1つになるほどの再開発を果たした推移について説明を受けました。
またPNC球場においては、施設の概要・運営方法などについて説明を受けました。特に危機管理の重要性、将来を見通した都市開発など貴重な視察となりました。
10月12日には、カーネギー美術館、博物館における学校教育・生涯学習との連携について視察しました。
ここでは、児童・生徒・教員の芸術講座が開かれており、講座中の生徒とともに作品作りの体験もできました。
ビル・ぺデュート市議会議員の案内により、シェィディサイド商業地区の視察後、カーネギー美術館と同様の講座が開催されるピッツバーグ芸術センターも訪問し、生涯学習の重要性、歴史を大切にするまちづくりなど、多くの成果をあげることができました。
10月13日には、ピッツバーグ市の再開発について説明を受けた後、徒歩にてコンベンション・センター、交通システムの視察を行いました。コンベンション・センターは、総事業費約1000億円の地域振興財政計画の一環として既存の3倍の広さへと増築中であり、完成後の総面積は33万平方フィート(10万平方メートル)となり、利用予定者はほとんどが全米・国際レベルであり多くの人がホテルを利用するなど経済波及効果は大いに期待できるとのことであり、ピッツバーグ市の大きく変貌した都市の姿を通じて、さいたま市政にとって有益な視察となりました。
10月14日からは、リッチモンド市に移動後、企業の研究場所を賃貸する、バイオ・サイエンス・パーク、各国の企業が利用している、インターナショナル・インキュベーション・センターを訪問し、警察学校では、ボランティアと警察の関わりについて説明を受けました。
リッチモンド市の安全を守るため、ボランティアの果たす役割は大きく、警察学校では、市民のため週1回、13週間のコースが既に27回開催され、383人の市民が卒業し、このうち96人がボランティア団体に登録され、地域の安全確保に貢献しているとのことです。
リッチモンド市のあらゆるところにおけるボランティア活動は、さいたま市においても重要な市政運営を示唆する内容でありました。
10月15日は、学校教育の現状について、ガバナーズ・スクール、クラーク・スプリング小学校を訪れました。
ガバナーズ・スクールは、優秀児教育のプログラムが組まれており、社会に出てリーダーシップをとれるよう教育することを目的としているが、卒業要件として地域のボランティア活動に参加することを義務付けています。
学校教育の現状について、年間行事計画、1週間の時間割、PTAの組織と目的など説明を受け、クラーク・スプリング小学校では、5年生に一人一人学校内を案内していただきました。
午後には、パイン・キャンプ場において、100人のボランティアが指導する青少年の美術・芸術講座の状況を視察し、その後、図書館に併設されているファミリー・サポート・センターを訪問しましたが、ここでもボランティアが運営に協力しているとのことであります。
特に、教育分野における「個」の教育のあり方、また、教育の中に人格の形成を取り入れていることは、さいたま市の教育にも大変に参考となる事例でありました。
アメリカでの最終日であります10月16日は、市役所におきましてボランティア精神と市への影響力についてユナイテッド・ウェイというNPO団体から説明を受けました。
この団体は、ボランティア団体の活動目的、事業の必要性、成果等を厳しく調査・検討し補助金を出す組織であり、ボランティア活動を支える資金集めを行っています。
9月から11月にかけて資金集めを行い、80%を個人から、20%を法人、2130万ドル(26億円)集めるとのことであり、リッチモンド市におけるボランティアの意義、必要性そしてボランティアを通じて行政と市民との協働について理解することができました。
私たち、視察・訪問団一行は、この視察の貴重な成果を政令指定都市としての、さいたま市政の伸展に反映し、また両市との国際交流事業の充実を図り、「21世紀をリードするみどりの広域交流・生活文化都市」の実現のため、微力を尽くしてまいります。
終わりに、ご指導・ご支援賜りました、関係者各位に心から感謝とお礼を申し上げ、報告といたします。
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